新年度早々、マイコプラズマ気管支炎に罹患し
鼻水と咳のダブル攻撃により呼吸困難に陥り
危うく三途の川を渡りそうになった林です。
皆さん、お変わりなくお過ごしでしょうか?
2023年度、事務方ではハイキュー旋風が巻き起こりましたが
その裏で鈴木主任の推薦図書「アオアシ」が
静かに私の2023年度マンガ大賞を獲得しました。
今作品は地方に暮らす中学3年生のサッカー部の少年が
ある日Jリーグのユースチーム監督と出会い
チームセレクションに誘われるところから物語は始まります。
鈴木主任曰く、部活動のサッカーではなく
クラブチームのユースが舞台になっているところがポイントだと。
強く薦められたこともあり何となく読み始めた訳ですが・・・
これが素晴らしい。
たかがサッカー漫画と侮る事勿れ。
マネージャー、プレイヤーに関係なく
組織に属する多くの方にとってビジネス書と成り得る作品といえます。
『すげぇ疲れてたのに必死にゴール前までつないだあいつらのおかげなんだ。
だからこぼれ球なんかじゃねぇんだ!偶然でもねぇ!全員の得点なんだ!』
短気で自由にやらせて貰えなければ何もできない
己のことしか考えていない自分を
初めて受け入れてくれた今のチームメイトが居たからこそ
何でサッカーをやっているのかを思い出したと言う主人公と
自分の作り上げたクラブを世界に認めさせるという野望を抱く監督が放つ一言
『野望の全てを担うもの、ユース(育成)だ』に
第1話から気持ちをガッと持っていかれる、こんな漫画は久しく無かったと思う。
皆さんも経験があるかと思いますが
長編となる作品あるあるで、エンジンがかかるのが3巻~5巻くらい。
しかし「アオアシ」は1巻1話からずっと面白い。
チーム戦術ではなく個人戦術、思考力の結晶を持たない主人公は
ユースでは通用しないと厳しく評価されるなか
練習試合で自分自身の足りない何かに気付き
ヘッドコーチに『サッカーを教えてください』と頭を下げ教えを乞う
彼の謙虚で素直な姿勢、その貪欲さに心が動かされる。
対して指導者側は
アドバイスを全部答えの一歩手前で止めること。
ハッキリこうと教えられるよりも
自分で掴んだ答えなら、一生忘れない。
正解をさっさと伝えるなんて、指導者の怠慢であり
考えさせることに意義がある。といった姿勢を崩さない。
物事を俯瞰し、チーム全体で考える。
チーム内での自分の働きについて個人戦術をもつ。
思考力を鍛え、自分の行動をきちんと言語化できるまでにする。
もうね、サッカー漫画の枠を超えています。
アラフィフの胸にグイグイきます。
そこそこサッカーが上手いと思い込んでいた主人公が
止めて蹴る、という基本を改めて習得することで
それ自体が目的ではなく
それが出来ることによってサッカーが広がるのだと
全ての練習には意味があることに気付く瞬間は圧巻です。
思想家パスカルの言葉『人間は考える葦である』は
作品を通して語られ作者の強い想いであることは
主人公 青井葦人(あおいあしと)の名からも推察できます。
サッカーはオフ ザ ボール
ボールを持っていない時の動きがすべて。
常に段取り八分
草川専務の言葉が頭に浮かぶ。
林 仁香